2005年10月20日

「市民メディアって何だろう」

  「市民メディアって何だろう」      
緑区 多賀和幸

私たちはインターネットを使って、市民や市民団体が情報を共有し、行政、大
学、企業と連携することにより、社会的課題を解決してゆけるのではないかと
いうコンセプトに基づき、「横浜市民メディア連絡会」を2002年に立ち上げた。
横浜市民メディア連絡会: http://www.y-cmc.com

横浜市民メディア連絡会は「市民メディアがヨコハマを変える」というテーマ
で3回のシンポジウム(*1)を行い、市民メディアについて、研究と実践を
進めてきた。  
今年の9月9日〜11日に熊本県山江村で開催された「全国市民メディア交流
集会」を、来年は横浜市で横浜市民メディア連絡会が開催する予定である。
第3回全国市民メディア交流集会: http://www.yamaemura.jp/new.htm

しかし「市民メディアって何だろう」と問いかけられると、正直なところ、ま
だ共有された概念はないというのが実情である。

市民メディアに対立する概念としてはマスメディアがある。
この違いを、発信する主体、使うメディア、受信者、コンテンツ(内容)に分
けて考えると、少し明確になってくる。

市民メディア:NPO、個人、市民記者(発信者)−ICTなどの新メディア−住民、
       一般市民(受信者)−社会性の高い内容、ローカルな内容

マスメディア:TV局、新聞社など、プロの記者(発信者)−既存メディア
       −広範囲の読者、視聴者−社会性の高い内容〜娯楽一般

発信者としては、商業的なメディアであるが、情報を発信しているのは市民記
者や市民レポータという中間的なメディアもある。韓国のオーマイニュースは、
このタイプであり、既存メディアを超える存在になりつつある。  
http://www.ohmynews.com/
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20030521204.html

日本においても同様な新聞JanJanなどが発行されているが、影響力は小さい。
JanJan : http://www.janjan.jp/

メディアという観点からは、市民メディアはWeb放送局やblogやMLやメールマ
ガジンなど資金力や許認可を必要としないインターネットが使われてている。

米国ではパブリックアクセスという仕組みがあって市民の自主制作番組、地域
大学などの教育番組、議会中継などの自治体番組の放送を、ケーブル業者が保
証することを制度化してきた。日本のCATVは、このような仕組みはないので、
市民が制作した作品やドキュメンタリーを放映する仕組みが遅れている。
http://www.net-ric.com/advocacy/datums/97_11tsuda.html

また米国においては今年5月のニューズウイークに“blogはオールドメディア
を殺すか?”という記事が掲載されたが、メディアを批判するメディアとして
blogが大きな影響力を持ってきている。日本おいては、blogは日記という私的
なメディアに留まっている。

「市民メディア」は一般に、公共財としての電波を使わず、配信などの仕組み
やスポンサーも不要であり、匿名での発信も可能であり、編集でチェック受け
ることも少ないため、マスメディアも比べて、社会的、経済的、組織的な制約
が少なく、誰でもが、自由に情報発信できることが特徴になっている。
電波や紙面で制約されるマスメディアに比べて、情報量の制約がないため、発
信される情報量は膨大であるが、情報の質は幅が大きい。
2チャネルやポルノ、出会い系サイトなどのインターネットを使ったメディア
は社会的問題を起こしている。これらは「市民メディア」でないという意見と、
これも「市民メディア」の一部であり排除すべきでないという意見がある。

市民メディアは社会性をもった[市民メディア」と、私人という立場の「私民メ
ディア」の二面性があり、私人という視点からの情報発信ができるところに、
市民メディアの存在価値と大きな特徴があると考えている。

最近、回線の広帯域化が進み、WebTVが開局し動画による番組制作が増えてきた。

横浜の近くでは、湘南.TVがある。  http://www.shonan.tv/
1人1人が発信するメディアとして湘南在住の市民と慶應義塾大学SFCの学
生がサイトを立ち上げ、作品を公開している。

横浜で生まれた、Webラジオ「ポートサイドステーション」は面白い。横浜ト
リエンナーレのアーティストのインタビューなど横浜のイベントの魅力が紹介
されている。 http://www.portside-station.net/

OurPlanet-TVは市民の視点や人権・環境を考慮に入れた番組の制作事業を行っ
ている。  http://www.ourplanet-tv.org/

第3回の全国市民メディア交流集会を開催した熊本県山江村では、テレビ番組
を制作する過程で求められる幅広い企画力、構成力、構想力などと同じ能力が、
村おこしにも有効であると、村人を「住民ディレクター」にしてしまう、プリ
ズムの岸本氏の「住民ディレクター養成」が注目されている。
プリズム: http://www.prism-web.jp/index2.html

*横浜市民メディア連絡会 シンポジウム
第1回 http://www.y-cmc.com/symp/symp02.htm
第2回 http://www.y-cmc.com/symp2004/symptop.html
第3回 http://www.y-cmc.com/y-cmc/archives/000077.html

Posted by takmi at 2005年10月20日 20:35