生き物こぼれ話(その29)

 この写真は電線に止まっているツバメです。スズメ目ツバメ科。あの優美で軽快な飛翔をするツバメが、分類学上はスズメの仲間だったとは意外な感じがするかも知れません。

 額と喉は赤っぽい褐色で、胸から腹は白い。尾は先が細く長くいわゆる燕尾服のかたち。ほぼ世界中に分布しています。

 人里近くに住み、人家や畜舎などの建物に巣をつくる。川や道の上を飛びながら、ハエ、トンボなどの飛んでいる昆虫を食べるのが観察されることがあります。

 巣の材料を集めるとき以外は地上に降りることは少ないので、カメラのシャッターチャンスは少ない。

 

 ツバメやホトトギスは、春先に南方から飛来します。日本で夏の間だけ生活して秋になると南方に帰って行きます。(夏鳥)。ツル、カモ、白鳥などは、秋になると北方から飛来します。日本で冬の間を過ごして春になると再び北方に帰っていきます。(冬鳥)

 そもそも鳥たちは何のために季節ごとに渡りをするのだろうか? その間の食料はどうしているのだろうか? 今回はツバメを素材にしながら、鳥の渡りについてのお話です。

 まず、鳥たちは何のために渡りをするのだろうか? あの小さな体の鳥たちが、飛行機にも乗らずに自分の翼だけで、お弁当も持たずに、何千キロという旅に出るのです。当然そこには多くの危険が待っています。目的地に着く前に力尽きてしまうもの、トビやタカなどの猛禽類に襲われるもの、台風に遭うもの、方位を見失ってしまうもの。それらはみな死への急行切符です。実は鳥の渡りについてはいろんな説が有って、何故渡りをするのか未だはっきりとしたことは分かっておりません。

 日本など、北半球の大地は樹木が繁茂していて昆虫なども豊富であり、鳥たちの繁殖の条件が良いが、秋になると昆虫が急に少なくなるので、鳥たちはエサを求めて南に移動する。 (食料説)
かつて地球が氷河期であった時代、地上の多くの地域が氷に閉ざされていた。鳥たちはやむなく食べ物を求めて、暖かい土地に移動した。これを繰り返しているうちに、渡りの習性がついた。 (氷河説)
地球は大昔、一つの大きな大陸であったが、それが次第に分かれて現在の6大大陸になった。この大陸の移動の中で鳥たちに渡りの習性ができた。(大陸移動説)
えさの問題は決定的要因で有るかも知れませんが、それだけでは多くの鳥たちの渡りの習性を説明することは困難です。永い年月の間にこれらの要因がいくつもからみ合って、渡りの習性が出来たと考えるのが妥当なようです。

 歩く、走る、泳ぐ、飛ぶなどのいくつかの移動方法が有る中で、飛ぶということは最も多くのエネルギーを要する手段と思われます。時には悪天候の中を風に逆らって飛んだりしながら、長期にわたって飛ぶために、渡り前の鳥たちはひたすら食べて脂肪分を貯えます。

 脂肪は重さの割にはより多くのエネルギーを取り出すことができるエネルギー源です。身に付けた脂肪分というお弁当が多いほど、長い距離を飛ぶことができるし、悪天候にも耐えることになります。

 しかし、渡り前にどんなに過食をしてももちろんそれだけでは間に合いません。渡りの途中で食料のあるところを見つけて、そこで数日間、休憩を取りながら栄養補給をします。そうして再び元気になってまた飛んでいくのです。
このようにしてツバメは、渡りのときには1日に300キロ以上移動するといわれております。近年はツバメの世界の食料事情が変化してきたようで、冬になっても渡りをしないツバメが観察されています。これは越冬ツバメと呼ばれております。


こんなお話は興味が有りましたでしょうか? 最後まで読んで下さって有難うございました。

(財団法人日本自然保護協会・自然観察指導員 小 原 芳 郎 記 )


戻る