生き物こぼれ話(その6)
  この写真はシロサイです。奇蹄目(きていもく)サイ科。体重:2.3〜3.6t。体高:1.6〜2m。

 体の色は茶色または灰色。アフリカ南部の草原・低木地帯に生息し、横に広がった扁平な形の口をまるで芝刈り機のようにして、下草を食べます。

 原住民がこの口を指して、ワイド(広い)といったのをホワイト(白)と聞き間違えたのが、名前の語源とされています。

 サイは地上ではゾウに次ぐ大きな動物です。ゾウ、キリン、サイなどの大型動物はみな草食です。

 どんなに巨大な動物であってもかつては、いまのネズミや猫くらいの大きさの時が有りました。それが世代を重ねるたびに次ぎ次ぎに進化を繰り返して、いまのような大きさになったのです。

そもそも何のためにこのように巨大になったのでしょう? 今回は動物のサイズについてのお話しです。
 まず、体が大きい場合の利点を考えてみましょう。体が大きいということは、多くの場合、それだけで強いことを意味しますから、足の早さや体重で圧倒すれば、捕食者に負けないし、食物を得るのにも有利だと考えられます。体の大きいものは、歩く速度も歩き回れる範囲も大きいから、良い環境を求めて移動が出来るので、飢餓や乾燥、あるいは寒冷や酷暑という環境の変化に対応する能力が高いと考えられ、それだけ残存性が高くなります。

 動物は体の表面を通して環境と接しているから、サイズが大きいほど単位体積あたりの表面積が小さくなるので、体表面を通しての環境の影響を受けにくくなります。例えて言えば、湯のみ茶碗のお湯は直ぐさめるけど、お風呂のお湯は冷めるのがゆっくり、というのと同じ理屈です。

 体温が高くて安定しているということには大きな利点があります。動物が歩く動く食べるという筋肉の運動は、体内での化学反応の結果ですが、その化学反応は温度が高い方が速度は速くなる。つまり体温が高ければ早い運動を可能にしますから、餌をとるにも捕食者から逃れるにも有利になります。

 表面から逃げていく水分の量は表面積に比例すると考えられます。サイズの大きいものは単位体積当りの水分蒸発量が少なくなるので、サイズの大きいものほど乾燥に強いことになります。

 一方、世の中には昆虫類に代表されるような小さい動物もたくさん生きています。小さければ環境の変化には弱いが、一匹の個体が必要とする食物の絶対量が少ないので、どこかの水溜り、草一本ででも生き残れるということになります。小さいものはその小ささを利用してさなぎになったり、卵を残したりして、冬を乗り切るということができます。小さい動物は個体としての生存の確率は小さくても、もともと絶対数が多いから、全体としてみれば種を保存する機能は高いと考えられます。

 海の磯にはアカウニが棲んでいます。棘皮(きょくひ)動物と呼ばれ、全身を鋭いトゲで覆っています。トゲは捕食者から身を守るためですが、刺さるという機能だけではなく、トゲがあればそれが邪魔になって、捕食者はウニ本体に到達できない。つまりトゲをたくさん立てればその分だけ体のサイズが大きくなる。サイズが大きければ食われにくいというわけです。穴に隠れるときにはこのトゲはちゃんとたためるようになっております。

 進化とは、当然変異によって生じた形質が、永い間の自然淘汰に耐えて生き残ってその数を増やしていく状態、またはその結果のことをいいます。

 進化に対して退化という言葉がありますが、進化・退化という区分は、人間が自分にとって理解しやすいように仮に分類してみただけであって、生物の側では生きるために積み重ねてきた試行錯誤の一つの結果であり、全てが進化です。

こんなお話は興味が有りましたでしょうか? 最後まで読んで下さって有難うございました。

 
(財団法人日本自然保護協会・自然観察指導員 小 原 芳 郎 記 )

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